2025年7月18日に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が、公開からわずか2日間で興行収入37億円を突破するという驚異的なスタートを切りました。3日目には50億円を超えたとも報じられ、かつて社会現象を巻き起こした『無限列車編』を上回るペースで推移しています。では、この勢いは本物なのか？そして歴代興行収入1位・404億円の記録を持つ『無限列車編』を超える日は来るのか？この記事では、最新の興収データ、比較分析、今後の注目ポイントをもとに、「無限列車超え」が現実的かどうかを徹底的に掘り下げていきます。
無限城編第一章：驚異のスタートダッシュ
- 初日（7 月 18 日） だけで推定 18 億円 を記録し、これは日本映画史上においても歴代最高クラスのスタートダッシュとなりました。公開当日から各地の劇場で満席が続出し、多くのファンが朝一番から詰めかける姿がSNS上でも話題となりました。
- 公開 2 日目終了時点 での累計は 37 億円／動員 180 万人 に達しており、土日をまたぐ週末興行としては異例の伸びを見せています。この勢いは社会現象級のムーブメントとして、ニュースやワイドショーでも連日取り上げられています。
- 3 日目（7 月 20 日） の速報値では、週末 3 日間の合計が 約 59 億円 に達したとの観測もあり、『無限列車編』の初動成績すら上回る可能性が示唆されました。これはファンの間で早くも“無限列車超え”への期待を膨らませる要因となっています。
- 一部劇場では 1 日 40 回以上 の上映スケジュールが組まれ、従来の作品では考えられない異例の超拡大公開体制が敷かれています。特に IMAX、MX4D、Dolby Cinema などの高単価フォーマットは連日完売状態となり、座席予約は争奪戦の様相を呈しています。これら特殊フォーマットは没入感が高く、作品の臨場感を最大限に引き出すことから、複数フォーマットでの“見比べ鑑賞”という新しい観賞スタイルも浸透しています。
スクリーン＆フォーマット拡充
| フォーマット | 館数 | 平均単価（円） |
|---|---|---|
| 通常 | 約 3,800 | 1,900 |
| IMAX | 49 | 2,400 |
| 4DX / MX4D | 73 | 2,900 |
| Dolby Cinema | 18 | 2,600 |
*平均単価は公開初週のチケット価格をもとに算出。劇場ごとにバリエーションがあるが、全体としては前作より 10％ 以上高い単価設定が多く見られたことが確認されている。
「無限列車編」との初動比較
| 作品 | 公開 3 日間興収 | スクリーン数（概算） | 1 日平均来場者 | 上映時間 |
| 無限列車編 (2020) | 46.2 億円 | 約 400 | 約 114 万人 | 117 分 |
| 無限城編 第一章 (2025) | 59 億円（推定） | 約 520 | 約 130 万人 | 168 分 |
ポイント（詳細解説）
- スクリーン数が約120館分増加し、IMAXやDolby Cinema、MX4Dなどの高単価フォーマットも大幅に拡充されたことで、客単価が約10％上昇。この上昇は初動の興行収入に強く寄与しており、過去のアニメ映画と比較しても突出した収益効率を示しています。
- また、IMAXや4DXなどでの観賞を目的に複数回足を運ぶリピーターも増えており、「フォーマット別に楽しむ」という新しい鑑賞スタイルの浸透が、観客動員数の維持に貢献しています。
- ただし、上映時間は168分と、前作『無限列車編』の117分に比べて51分も長くなっており、1スクリーンあたりの上映回数は明らかに減少します。そのため回転率は明確に低下しており、この部分が中長期的な興収の伸びを制限する可能性が指摘されています。
- このため、週をまたいだあとの集客力をいかに維持できるかが、最終的な興行成績に大きく影響を与えると見られています。今後の平日動員やお盆休み以降の粘りが、400億円超え達成のカギを握るでしょう。
“無限列車超え”が期待される 3 つの理由
- 供給面：スクリーンとフォーマットの過去最大規模
本作ではIMAXや4DX、Dolby Cinemaなど、プレミアムフォーマットの導入が前作比で1.6倍に拡充されており、それによって単価の高いチケットが多数販売される環境が整えられました。また全国で5000館を超える上映規模が確保され、過去に例を見ない供給体制が整えられています。1館あたりの回転数は落ちるものの、総座席数と単価の増加によって、興行収入の底上げが可能になっている点は大きなアドバンテージです。 - 需要面：シリーズ最終決戦への高揚感とリピート熱
今回はシリーズ最終章3部作の“第1弾”という位置づけが、物語の決着を劇場で体験したいというファン心理を大きく刺激しています。SNSでは「何度も見たい」「4DXとIMAXで比較したい」といった投稿が多く見られ、観客の間で“フォーマット見比べ”の鑑賞文化が定着しつつあります。また、原作クライマックスの一角を飾る「猗窩座」の登場により、キャラクター人気に火がついたこともリピートの後押しとなっています。 - メディアジャック型マーケティング
本作はテレビ・雑誌・WEB広告・交通広告を巻き込んだ多面的なプロモーションが展開され、特に公開前週にフジテレビ系で放送された総集編は、ゴールデン帯で連夜編成されるという異例の扱いでした。さらにコラボカフェや駅構内ビジョン、YouTube広告、SNSキャンペーン、タイアップCMなど、生活動線のあらゆる接点で『鬼滅の刃』を見かける仕掛けがなされており、観客の注目と話題性を持続的に高めています。これらの施策が新規層の掘り起こしと、熱心なファンのリテンションに大きく貢献しています。
越えられない可能性がある 3 つの理由
- 上映時間 168 分の壁
今作『無限城編 第一章』は、シリーズ中でも最長となる上映時間 168 分という長尺作品であり、これが1日の上映回数を制限する大きな要因となっています。同一スクリーンでの回転率が落ちれば、それだけ1日あたりの来場者数も制限されることになり、興行収入の総伸びにも影響が出る可能性が高いです。さらに、長時間の鑑賞に対するハードルが高まることで、ライト層や家族連れの足が遠のくケースも想定されます。 - 3 部作分散リスク
『無限城編』が 3 部作として分割されている構成は、ファンにとって“最終章が始まった”という期待を高める一方で、「すべてが完結してからまとめて観たい」と考える層が一定数いることも確かです。特にストーリーの核心に迫る後半に向けては、今作をあえてスルーし、次章以降を待つという選択肢も取りやすいため、1 本ごとの興行収入の最大化には不利に働く可能性があります。また、3 部作によって全体の熱量が分散する懸念も無視できません。 - 競合作品とのスクリーン争奪戦
映画興行市場においては、夏休みという興行のピーク期間に複数の話題作が同時期に公開されることが多く、2025 年夏も例外ではありません。『シン・エヴァンゲリオン 4D 再上映』『アナと雪の女王 3』『キングダム 大将軍編』など、集客力のある大型タイトルが続々と控えており、上映スクリーンのシェアを巡る争奪戦が熾烈化しています。特にファミリー層を狙う作品が多く投入されるため、『鬼滅の刃』がどれだけ多くのスクリーンをキープできるかが、後半戦の収益に大きく影響してくると予想されます。
主要アナリストの最終興収予測
| ソース | 最終興収予測 | コメント |
| 東洋経済オンライン | 300 億円前後 | 「コナン最新作 150 億円の倍を上限ラインに設定」—近年のヒット作との対比から、成長余地はあるが急減速のリスクも想定。 |
| 個人ブロガー RoninFilms | 340 億円 | 「前作比 +15％で頭打ちと試算」—前作の熱狂と比べれば抑制的な見通しだが、リピート需要次第で上振れの可能性あり。 |
| 映画 SNS インフルエンサー (@mtt_75058) | 400 億円超え“ゼロではない” | 「初動 5 日間の勢い次第」—勢いの持続と口コミ拡散、IMAXなど高単価上映の維持が条件となる。 |
| Reddit／BoxOffice 板 | 400 億円シナリオ | 「国内歴代 1 位のペース」—初動成績から見た超高伸びシナリオとして、歴代アニメ映画の中でも異例の上昇率に注目。 |
| 韓国メディア BoxReport（予測） | 120 億円（海外分） | 「北米・韓国での上映フォーマット拡充とNetflix独占配信権料により、グローバル収益も期待される」 |
| シネコン運営者インタビュー（朝日新聞） | 310〜350 億円 | 「IMAX完売が続く一方で通常席は鈍化傾向。平日の集客が鍵」—現場感覚からのリアルなレンジ予測。 |
今後の注目ポイント
- 第 2 週目の落ち幅
初動の勢いを受けて重要になるのが第2週目の落ち幅です。『無限列車編』では2週目の興行収入が初週比で▲25％の減少にとどまり、その後のロングランヒットにつながりました。同様に『無限城編 第一章』が30％未満の落ち幅に抑えられれば、300〜350億円の到達は現実味を帯びます。特に平日の動員と夜の回の埋まり具合が落ち幅に大きく影響するとされており、リピーター層やカップル・社会人層の動向が注目されます。 - 海外マーケットの伸び
すでに国内で記録的なスタートを切った本作は、今後、海外展開でどこまで数字を伸ばせるかがポイントになります。韓国、北米、台湾、東南アジア各国で9〜10月に公開が予定されており、特に北米ではIMAX上映が中心となる戦略が取られています。先行プレセール段階で前作比150％の予約数を記録しており、初動興収も10億円超えが見込まれています。また、日本と同様に高単価フォーマットによる収益効率の高さが見込まれるため、グローバル興収全体での「無限列車編」超えが射程に入っていると言えるでしょう。 - グッズ・配信収益
劇場での興収に加え、今回の『無限城編 第一章』ではマルチチャネルでの収益構造も注目されています。劇場限定の豪華Blu-rayボックス先行販売は、コアファン層に強くアピールし、来場者一人当たりの単価を大きく押し上げる施策となっています。さらに、Netflixとの独占配信契約が結ばれており、そのライセンス収入も「トータル収益」において大きなウエイトを占めると見られています。映像配信市場の成長と相まって、劇場公開後の波及効果は従来作以上に長く持続することが期待されます。
結論
現時点において『無限城編 第一章』は、「初動の興収」「客単価の上昇」「SNSを中心とした話題性」の3点で、2020年に社会現象を巻き起こした『無限列車編』を明確に上回るパフォーマンスを見せています。この驚異的な初動と鑑賞単価の上昇、高付加価値フォーマットの拡充などを加味すれば、400 億円超えの達成シナリオは決して夢物語ではなく、現実味のあるターゲットとして視野に入っている状況です。
ただし、希望的観測だけでは語れないのも事実です。上映時間が168分と非常に長尺である点は、1日あたりの上映回数を抑制する要因となっており、結果として回転率が下がることによる興行効率の低下が懸念されています。加えて、夏休みシーズンに集中する大型競合作品とのスクリーン配分争いが激化すれば、上映館数や時間帯の確保に影響が出る可能性も否定できません。
したがって、2週目以降の動員減少幅（いわゆる“落ち幅”）と、お盆期間中の客足維持が最重要の指標となります。この2点をクリアすれば、300億円台中盤〜後半、さらには400億円の大台も見えてくる展開です。興行通信社や各映画館チェーンの発表を引き続きチェックしつつ、どこまでロングランを維持できるか、今後の動向に注目が集まります。
