YouTubeやNetflixなどを手軽に楽しめるスマートテレビは、今や多くの家庭で当たり前の存在になりました。しかし、この便利な家電には意外な落とし穴があります。それは、搭載されているOSのサポート期間が平均わずか2〜3年しかなく、サポートが切れたまま使い続けるとマルウェア感染のリスクが急激に高まるという点です。FBIが2025年に緊急警告を出すほど、スマートテレビやIoT家電を狙った攻撃は急増しています。感染するとテレビだけでなく、家庭内のパソコンやスマホ、ルーターにまで被害が広がり、個人情報の流出や不正アクセスに利用される危険性も。この記事では、スマートテレビのサポート期間が短い理由や、感染が広がる仕組み、さらに安全に使い続けるための具体的な対策まで徹底解説します。購入時や使用中に注意すべきポイントを知り、家庭のネットワークを守りましょう。
スマートテレビにもOSが搭載されている
多くの人は「OS＝パソコンのもの」と思い込んでいますが、実際にはスマートテレビや冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど、最近のIoT家電には小型の専用OSが組み込まれています。これらのOSは見た目には意識しにくいものの、内部ではアプリを動かしたりネット接続を管理したりする重要な役割を担っています。パソコンのWindowsやmacOSと同様に、このOSにもサポート期間が設けられており、期間が終了するとセキュリティ更新や不具合修正が行われなくなります。
サポートが切れた状態でそのまま使い続けると、OSの脆弱性が放置されるため、マルウェアに感染する危険性が急激に高まります。しかもスマートテレビが感染すると、被害はテレビだけにとどまりません。家庭内ネットワークを介してパソコンやスマホ、ルーターなど他の機器にも感染が広がり、結果として個人情報の流出や不正アクセス、さらには犯罪行為の踏み台として悪用されるリスクまで発生します。このように、普段は意識しないテレビのOSにも、パソコンと同じようにセキュリティ上のリスクが潜んでいるのです。
FBIが緊急警告を出した現状
2025年6月、FBIはスマートテレビを含むIoT機器で世界的にマルウェア感染が急増している現状について、異例の緊急警告を発表しました。警告では、家庭内で当たり前に使われているテレビや家電が攻撃対象になっており、特に「ボイド」や「バッドボックス2.0」と呼ばれる新型マルウェアは、ユーザーが特別な操作をしなくても、電源を入れるだけで感染してしまう恐れがあると説明されています。
「ボイド」は2024年9月時点で世界中で約130万台ものデバイスが感染していましたが、その後さらに勢いを増し、2025年1月から3月のわずか3カ月間で新たに160万台以上が感染したと報告されています。この驚異的な感染拡大は、ネットワークを介して自動的に拡散する仕組みが原因とされ、セキュリティ対策が不十分な古い機器ほど危険度が高まります。
さらにもう一つの脅威である「バッドボックス2.0」は、中国製Androidテレビやスマートフォンに、工場出荷時点ですでにマルウェアが仕込まれていたことが明らかになりました。つまり、購入直後から感染した状態で出荷されている製品が数多く存在しており、初期化や工場出荷時設定へのリセットを行っても感染を回避できないという非常に深刻な問題が指摘されています。
サポート期間は平均2〜3年しかない
スマートテレビのOSサポート期間は平均するとわずか2〜3年程度と非常に短いのが現状です。特にAndroid搭載のスマートテレビはサポートが終了するまでの期間が短く、メーカーによっては購入から2年程度で更新が打ち切られてしまうケースもあります。これはパソコンやスマートフォンのように頻繁に買い替える製品ではないだけに、ユーザーが想定する使用期間とのギャップが大きな問題となっています。
さらに注意が必要なのは、保証期間とサポート期間が全くの別物である点です。仮に保証期間が5年間あったとしても、それはあくまで「テレビとして正常に動作すること」を保証しているに過ぎず、セキュリティ更新やOSのアップデートが継続されることを意味してはいません。しかも、多くのメーカーはサポート終了の時期を利用者に通知する仕組みを設けていないため、知らないうちに危険な状態で使い続けてしまうことが非常に多いのです。このように、サポート期間の短さと情報不足が重なり、ユーザーがリスクを認識しづらい点が大きな課題となっています。
サポート切れスマートテレビを安全に使う方法
もしお持ちのスマートテレビがすでにサポート切れとなっている場合は、まず第一にインターネットから完全に切断することが重要です。LANケーブルを物理的に抜く、または設定メニューからWi-Fi接続をオフにすることで、ネットワーク経由の攻撃やマルウェア感染のリスクを大幅に減らせます。これにより、テレビは従来のような受信機としてのみ機能し、少なくともセキュリティ面での危険を回避できます。
ただし、インターネット接続を切るとYouTubeやNetflixなどのストリーミングサービスは利用できなくなります。その場合は、Fire TV Stickなどの外付けデバイスを活用する方法がおすすめです。HDMIポートに接続するだけで簡単にスマート機能を追加でき、古いテレビでも最新の動画サービスを安全に楽しめます。Amazon製のFire TV Stickはサポート期間が比較的長く、セキュリティ更新の頻度も高いため、安心して使用できる点が大きなメリットです。さらに、問題が発生した場合でもデバイスを交換するだけで済むため、テレビ本体を買い替えるよりもコストを抑えつつ長期的に安全性を維持できます。
スマートテレビ購入時の注意点
特に安価な中国製ノーブランド製品は、工場出荷時からマルウェアが仕込まれている事例も報告されているため、価格だけで選ばず購入は慎重に検討しましょう。
有名メーカー品であっても、実際の製造元やOSの更新体制がどうなっているかを事前に確認することが大切です。ブランド名だけで安心せず、公式サイトやサポート窓口で情報を集めましょう。
購入後は必ずメーカーに問い合わせて、自分が購入したテレビのOSサポート期間や更新状況を確認することを習慣にすると安心です。場合によっては、購入直後からサポート終了が近いこともあるため注意が必要です。
可能であれば、ファームウェア更新の頻度や過去のサポート実績もチェックし、長期的に安心して利用できる製品かどうかを見極めることが重要です。
まとめ
スマートテレビは確かに便利な家電であり、動画配信サービスを手軽に楽しめるという大きなメリットがあります。しかし、OSのサポートが終了した状態で使用を続けると、家庭内ネットワーク全体がサイバー攻撃の脅威にさらされる可能性が高まります。安全に利用するためには、利用中のテレビが現在もサポート対象かどうかを定期的に確認すること、必要であればインターネット接続を切断して通常のテレビとして使うこと、さらに外付けデバイスを活用して機能を補うなど、複数の対策を組み合わせることが重要です。
また、「安いから」といった理由だけで型落ちのスマートテレビを購入する前には、必ずサポート期間や製造元、OS更新体制などを調べる習慣を身につけることが大切です。こうした事前確認を行うことで、セキュリティリスクを最小限に抑えながら、安全性と利便性を両立した映像ライフを長く楽しむことができるでしょう。
